リレーコラム

2010.10.29

リレーコラム  vol.2

WLB導入は、経営者の腕の見せどころ

vol-2

実は、「会社って何ですか」と言う問いかけに、即座に明確に答えてくれる経営者は、大変少ないのです。また、社員も少ないのです。私自身にも、分からない問題でした。

平成15年、四日市のセミナーで、講師が、「HONDAさんは、『会社とは、そこで働く人たちが幸せをつかむ場所』と定義しています」、と言うのを聞いて、ある種の答えを得たように思いました。無論、自分が幸せになる為には、お客様を幸せに出来なければ、継続できないことにも思い至りました。

平成17年、三重県は次世代育成の必要性を強く感じ、これまでは、どちらかというと市民活動的だった子育て支援に関し、企業にも何か役割分担を考えてもらえないかと、「みえ次世代育成応援ネットワーク」(http://www.jisedai.pref.mie.jp/)の立ち上げを企画しました。

その会合で、某団体理事長さんが、「企業は利益を追求するんじゃ。こんなバカな活動に参加するものか」と、罵声をあげました。しかし会の締めくくりに、委員の一人である民間の社長さんが、「私は、いったい何ができるか分からないままこの委員会に参加していたが、何回か参加している内に、ああ、企業とは地域に育てられるものだと、つくづく感じました」、と発言され、感動を誘いました。その後、某理事長は、2度と委員会には現れませんでした。

この活動を進めていく中で、WLBは、主テーマとして何回もセミナーが開催され、WLBを導入した企業と導入していない企業を比較すると、導入した企業の方が、遥かに高い利益を上げている、と言うドイツの統計なども紹介されました。

このネットワークは、平成18年6月に立ち上がりましたが、当初の参加企業は、81社でしたが、その後、前回の桐木先生の文にもあったように、内閣府が「WLB憲章」を策定したことなども後押しとなり、今では279社となっています。

ともすれば、社員の福祉として語られることが多いWLBですが、もはや福祉的施策ではなく、新商品開発や販路開拓と同じく、利益を上げるための立派な経営手段であると認識すべき時が来ています。そして、それをどう使いこなすかは、それこそ経営者の腕の見せどころ、と思うのです。「我こそは、」と腕を振るわれる経営者の出現を期待しています。

限られたスペースでしたが、私の考えているWLBのさわりを話させていただきました。もしまた、寄稿させていただく機会がありましたら、「主婦こそベンチャーの鏡」について、聞いていただければと思います。

ありがとうございました。

執筆者 : 渡邊 憲一(ワタナベ ケンイチ)氏
【執筆者紹介】
愛媛県出身、横浜市在住(平成20年4月より松山に単身赴任)、60歳
座右銘は、「老人は国の礎、子は国の宝。ありがとう日本」
現在は公的機関にて経営アドバイザーとして勤務する傍ら、NPOの役員等広く活動している。

渡邊 憲一