2020.03.05
【ハタラクを変える:企業事例】株式会社杉住宅
株式会社杉住宅
代表取締役社長 中川あゆみさん
「仕事はチームで楽しく、遊びはまじめに」を実現する環境づくりを
業種:不動産業
従業員数:50名
杉住宅に2016年に入社、2019年7月に代表取締役に就任した中川さん。
杉住宅での働き方の工夫をお聞きしました。
Q:杉住宅さんといえば、てんとう虫のマークの建物をよくお見かけします。
A:父である会長が1982年に創業、マンション賃貸物件を中心に手掛けています。仲介ではなく、自社物件を多く持っていることを強みにしています。
Q:杉住宅さんは、女性の社員が多いと聞いています。
A:全従業員の4割程度が女性です。正社員率も定着率も高く、弊社では、性別で待遇や職域の差はないんです。
併せていうと、営業成績の上位10名は全員女性なんです。
その分はしっかりお給料にも反映させていますので、男性よりもお給料の高い女性がいるのも当たり前です。
Q:おお、それは素晴らしいです。女性は優秀だと多くの企業から聞きますが、具体的にそのような話を聞くことは多くはないのですが、それは何か工夫があるのですか?
A:直接的な要因ではありませんが、私が入社してからは、シングルマザーを積極的に採用しています。
私自身、シングルマザーの経験があり、仕事に真面目に向き合ってくれるだろうという考えからです。
あわせて、シングルマザーであれば当然、労働時間に制限があります。そこにはしっかりと配慮をしています。
Q:労働時間への配慮とは、どのようなことでしょうか。
A:当社は、残業をするという文化がありません。
創業当時から、会長は「仕事は定時で収めるもの」という考えで、残業をするのは「効率の問題だ」と言っていました。
会議も、就業時間内に行います。
そういった考えからも、女性に限らず、残業がほとんどありません。急なお休みや子ども行事の優先もあって然り。
早く帰ることへの罪悪感、というのもないような雰囲気になっています。
Q:不動産業というと、お客様相手のお仕事が多く、土日も夜も忙しいイメージです。
A:当社は土日も営業はしていますが、営業時間は9時から18時です。18時にはしっかり締めます(笑)
土日の勤務についてはシフト制で、そこにはシングルマザーに限らず、働いている人それぞれに事情があり、希望もあるので、
「お互い様シフト」を組んでいます。
Q:「お互い様シフト」とは?
A:若いスタッフは若いスタッフで、土日に遊びや結婚式出席等休みたい事情がある。子育て中のスタッフは子ども行事などがある。
そこに優先順位はなく、「じゃあこの日はおじいちゃんに子どもを頼んで私が出勤するから、こっちの日は休ませてね」など、
お互い伝え合ってシフトを組んでもらっています。
これからは、介護の問題も出てきますし、実際、管理職で介護休暇を取得しているスタッフもいます。
若いから、独身だから、子どもが大きいから大丈夫だろうではなく、お互い様とは相手に向き合っての本質理解が必要です。
Q:子育て女性にだけ配慮、となるとカバーする側に不平等感が芽生えますが、会社全体での残業ナシ文化・お互い様文化であれば不平等感も生まれづらいですね。
A:そういう意味で、女性を中途採用する際には特に「仕事への意識」を重視しています。
土日は休みたい等の事情はそれぞれありますが、一緒に働く人たちにも配慮ができるか?その「覚悟」があるかどうか問います。
ときに、その意識の低さに残念だなと思うことにも出会います。自分だけが仕事をするのではない。
働き始めてからのイメージが、「自分が休めるかどうか、自分の事情が優先されるか」だけで止まっているのはもったいないです。
Q:ほかに、職場環境で工夫されていることはありますか?
A:情報共有を、グループウェア(サイボウズ)を利用しておこなっています。
それぞれのスケジュールはもちろん、有給申請等々業務においてはワークフローを活用して効率化を進めています。
実は、以前は有給を申請するときには上司に「すみません」と少々の負い目を感じながらハンコをもらっていました。
有給もほぼ完全取得してもらっていますが、こういった小さな「すみません」をなくすためにも、このワークフローは有効だったと思っています。
Q:働く人の、小さな「モヤモヤ」を払拭している工夫があるなと感じます。
A:私自身の経験が土台にあると思います。
専業主婦で仕事を離れていた時期があり、そののち、シングルマザーとなり「働かないといけない」状況になった経験もあります。
また、現在は新たなパートナーとの共働き経験をしています。どの立場においても困りごと、モヤモヤはあります。
せっかく働くのであれば、楽しくチームで働きたいというのが私の信念です。
遊ぶときは、中途半端にせず時間もお金もかけて「まじめに」遊ぶ(笑)。
モヤモヤしながら働くよりも、楽しく働きたいし、働いてもらいたい。そのモヤモヤを取り除くことは経営者としてできる限りしていきたいと思ってます。
Q:(3年前に入社したシングルマザーのSさんに向けて)本当に職場はそんな感じですか?(笑)
A:(笑)杉住宅は、本当に働きやすいと実感しています。
前職は、携帯電話の販売業をしていたのですが、夜遅くなることも多々ありました。
シングルマザーで子どもを養うためには、(残業があるのは)仕方がないと思っていましたし、
でも子どもと関わる時間も少なくなるので子どもに申し訳ないという気持ちもありました。
まったく畑違いの今の仕事に転職しましたが、仕事に対して評価もしてもらえるのでやりがいもありますし、
時間に余裕も生まれ、子どもとの時間も増えました。資格取得の勉強もしています。
配慮がある分、仕事でしっかり返していこうという気持ちになります。
取材:堀田