リレーコラム

2011.01.31

リレーコラム vol.4

「食を通じて感じたバカンス大国フランスと日本の違い」

フランスでは、「自分や家族の生活のために仕事をする」のが当たり前ですが、日本では真逆で「仕事のために生活がある」のを実際働いてみて感じ、驚いたのと同時に仕事をするのが苦しかったです。現在は立場上慣れましたが、人生が大きく違うのではないでしょうか。

「1週間の中で、家族そろって夕食を食べる回数」というデータで、フランスをはじめとするヨーロッパでは7回という答えがダントツ多いのに対し、日本では0回か1回という答えが圧倒的に多かった、というのを聞いて、本当に驚きました。

フランスの家庭では、「食事」という場は人としての知恵や工夫、コミュニケーション能力を身につける、大切な時間だと当たり前に考えられています。テーブルを囲んで家族それぞれの今日あった出来事を話したり、お皿を準備する、料理を作る、片付ける、という作業を通じて協力し合うこと、生活力をつけることが家族コミュニケーションの一つであり、子育ての一つです。
日本では「食育」という言葉がありますが、フランスではそれが当然と根付いているのでそこが文化の違いかもしれません。

また、フランスでは仕事の長期休暇は1ヶ月あります。
ない・もしくは数日、という日本に比べると、休暇の過ごし方や考え方も違います。ですので、フランス人はその休暇で旅行をしたりおいしいものを食べに行ったりもしますが、ゆっくり本を読んだり、ゆっくり家族と過ごしたり、とお金を使わない時間を楽しみます。
一方日本では、「せっかくの休みだから」と慌ててどこかに行こうとしたり、いいホテルに泊まったりして、その時間を無駄にしないように必死になっているようにも見えることがあります。
心をリフレッシュして、「明日からまた仕事も頑張ろう!」と思えるのはその休暇の過ごし方ではないでしょうか。

「なぜ長期バカンスが必要なのか」と考えてみますと、仕事や毎日の習慣から自分を開放し、まだ見ぬ世界へと旅行し、自然を楽しみ、味わったことのない食材を探し、その地の人々の生活を見る。生きている感覚を味わう。
そのときの思い出を将来の自分に蓄える、のだと思うことに気づき始めることでしょうか。

<筆者夫婦紹介>

vol-4

*トネト=フィリップさん
フランス・ロレーヌ地方出身。
松山市南堀端のフランス田舎料理「アミティエ」の料理長。
食を貪欲に追及する料理人でありながら、自国での職業は国家公務員という異色の経歴の持ち主。
無理だと思っていた禁煙に成功!趣味多き、型破りな愛すべきにくたらしいフランス人シェフ。最近の趣味は家具造り。

vol-4-2

*鐵山 和美(てつやまかずみ)さん
通称:てっちゃん。
愛媛県今治市出身。
フランス国立美術大学を卒業。
アミティエの看板娘として20年。食と美を追求。